2025年に対応する「訪問看護ステーションの未来をつくる」 ~訪問看護ステーションの大規模化~

2025年に対応する「訪問看護ステーションの未来をつくる」
~訪問看護ステーションの大規模化~

こんにちは、青井香里です。

団塊世代と呼ばれる約800万人が75歳以上の後期高齢者になる2025年も間近に迫っています。

本日は、2025年に対応する訪問看護ステーションの未来をつくる、大規模化について解説したいと思います。

2025年以降、医療・介護の課題

団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、医療・介護では、

①一人暮らし、高齢者のみ世帯数の増加

②死亡者数の急増

③認知症高齢者数の増加

④医療費・介護給付費の増大に伴う財源確保

⑤医療・介護業界の人手不足 

こうした問題がさらに深刻化していきます。

2025年以降、医療・介護の課題

これらの解決策として、国では在宅医療・介護の拡充と地域包括ケアの進展を進めています。

訪問看護ステーションは、在宅医療・介護の中心的な存在として、また地域包括ケアの中で多職種連携の担い手として重要な役割を果たしていることから、在宅医療・介護の拡充と地域包括ケアの進展には訪問看護ステーションの規模拡大が求められることとなります。

訪問看護ステーションの現状

まずは、訪問看護ステーションにおける規模の現状について記します。

下のグラフにあるように、訪問看護ステーションの従事者数は、2020 年時点では 7.8 人で、そのうち看護職員は 5.4 人となっています。

看護職員(常勤加算)が5人以上の訪問看護ステーションは増加傾向にありますが、 5人未満の小規模ステーションが全体の半数以上を占めています。

図表 11 1事業所あたりの常勤換算従事者数

図表12 看護職員規模別の訪問看護ステーション数(割
合)の推移

参照元:一般社団法人 全国訪問看護事業協会「アクションプラン 2025 評価チーム」「訪問看護アクションプラン 2025の最終評価(案)」P4 図表11と図表12

小規模の訪問看護ステーションが多いのが現状です。

訪問看護ステーションの大規模化によるメリット

次に訪問看護ステーションが大規模化することのメリットについて述べていきます。

(1)収益が向上する

次の図表にあるように、訪問看護ステーションの事業運営においては、職員規模が大きいほど、看護師一人あたりの訪問回数が多くなるなど、収益の向上が図れます。

図表 13 訪問看護ステーションの看護職員規模別の看護職員 1 人あたりの訪問回数

図表 14 訪問看護(予防を含む)1施設・事業所当たり収支額,収支等の科目,延べ訪問回数階級別

参照元:一般社団法人 全国訪問看護事業協会「アクションプラン 2025 評価チーム」「訪問看護アクションプラン 2025の最終評価(案)」P4 図表13と図表14

また、一定条件の規模や機能を有する訪問看護ステーションは評価が高くなり、保険収入が高くなります。

さらに、大規模化により、物品の購入や広告費などを共同で行うことができ、コストの削減が可能になります。

訪問看護ステーションの大規模化には収益向上につながる数々の要素があります。

(2)人材の確保と維持が容易になる

訪問看護ステーションは、大規模化することで知名度が上がり看護師や療法士などの人材をより多く確保できるようになります。

また、勤務環境の改善や給休暇取得率の向上につながることや、研修参加が組織的に行われるため人材の定着率も高くなります。

(3)高品質で多様なサービス提供が可能になる

訪問看護ステーションは、大規模化することで専門的な看護技術の導入や専門性の高い看護師を採用することができるため、
高品質な訪問看護サービスを提供することができます。

また、ご利用者のニーズに応じた多様な看護サービスの提供も可能になります。

(4)多職種連携が強化され、地域包括ケアの充実が図れる

訪問看護ステーションは、大規模化することで地域医療機関や多職種の連携が強化され、地域包括ケアの充実が図れます。

(5)ご利用者の安定確保

訪問看護ステーションは、大規模化することで、信頼性や依頼に対しての対応力が上がることで、新規やリピートによる
ご利用者の安定的な確保が可能となります。

以上のように、訪問看護ステーションの大規模化は経営の安定はもとより、地域にとってのメリットも多くあります。

そして、在宅医療・介護の拡充と地域包括ケアの進展に大きく寄与することとなります。

訪問看護ステーションの大規模化とは何か

それでは、訪問看護ステーションの大規模化とは何か言ついて具体的に記していきます。

全国訪問看護事業協会が提唱する訪問看護ステーションの大規模化をもとに以下に4つの項目にまとめました。

(1)事業所運営の基盤が整備されていること

具体的には、

・常勤看護師が 7 名以上在籍している

・キャリアアップ/スキルアップの体系がある

・研修体制が充実している

・ワークライフバランスの仕組みがある

・有給休暇の取得率が高い

・オンコール当番の回数が少ない

(2)ご利用者の状況に応じた専門的なサービスの提供がなされていること

具体的には、

・休日・祝日・急な退院でも対応できる

・精神・小児・ターミナルの療養者への対応ができる

・カンファレンスの定期的開催を実施している

・ICTの活用が進んでいる

(3)多職種・他機関との連携ができること

具体的には

・療養者の状態毎に多職種、他機関との連携できる。

・入院の可能性のある療養者に対して、本人の意向を確認した上で病院の医師や看護師等と対応方法を共有できる

・サービス担当者会議等へ出席し情報提供や提案ができる

・共同支援を行うためのカンファレンスの開催

・療養者の尊厳を尊重した、スムーズかつタイムリーな入退院連携ができる

(4)誰でも安心して暮らせるまちづくりへの参画を行っていること

具体的には、

・地域住民に向けた相談・情報発信を行っている

・疾病や障害への理解を促すための学習会などの開催している

・市町村、教育機関、行政への政策提言を行っている

・行政の行う事業への協力をしている

まとめ

2025年に対応する「訪問看護ステーションの未来をつくる、大規模化」は事業成長の指標となる

訪問看護ステーションの大規模化は、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、我が国が抱える、医療・介護の多くの問題を解決する重要な事項となります。

現在訪問看護ステーションを運営している事業所や、これから訪問看護ステーションを開業する方にとって、2025年に対応する「訪問看護ステーションの未来をつくる、大規模化」は事業成長の指標となると考えます。

投稿者プロフィール

青井 香里
青井 香里
横浜市生まれ。筑波大学創立者で3代目学長を大叔父に持つ。幼少期は父親の転勤にて海外で暮らし、インターナショナルスクールで多国籍の人々と触れ国際感覚を身につける。フェリス女学院短大卒業後、伊藤忠商事(株)東京本社に勤務。

2012年、日本医療の在宅移行に伴い「子供からお年寄りまで」すべての生活者が安心と幸福を実感できる地域社会づくりの必要性を痛感し、単身で福祉先進国であるスウェーデンとデンマークに飛び在宅看護、介護を学び、またニューヨークにて世界最大規模の在宅医療介護サービスの団体を視察。

日本の来たるべき時代における在宅医療は財政面も含め先進諸国に近づくという予測から、訪問看護ステーションの在り方を確立し、「訪問看護ステーション開業・運営支援」を開始。その支援先は民間企業から医療法人まで全国800社以上に広がり、地域医療と福祉の充実に貢献。

長年の運営支援の経験と実績に基づく、時代や地域に合わせた確固たる訪問看護ステーションの運営ノウハウを構築している。

訪問看護ステーションで独立起業を目指す看護師へ、新規開業の経営者とマッチングし、立ち上げから運営責任者として経営者の疑似体験をする仕組みを確立。

多数の民間経営者と看護師の独立開業マッチングを成功させる実績も持つ。

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