睡眠はお金がかからないアンチエイジングの魔法の薬

睡眠はお金がかからないアンチエイジングの魔法の薬

こんにちは、医師の西嶌暁生です。

人生100年時代と呼ばれる社会の中で、「笑顔で自分らしく、活き活きと自立して生きる」ために不可欠な「健康」。時間・労力・コストをかけることなく、在宅でも手軽に始められる「健康・美容増進のコツ」を毎週金曜日にお伝えします。

本日は、「睡眠」についてお話しさせていただきます。

睡眠はお金がかからないアンチエイジングの魔法の薬

「睡眠」は在宅で取り組むことのできる1番の健康・美容増進法であることは間違いありません。

健康で元気な身体を維持するために睡眠がいかに大切かを簡単にお伝えしたいと思います。

睡眠はお金がかからないアンチエイジングの薬として毎晩処方されているのに、その魔法の薬をきちんと飲んでいない人がほとんどなのです。

ぜひ、本稿をきっかけに、今一度自分の睡眠習慣を見直してみて下さい。

30代以降は睡眠の質が低下する!

眠りの問題は年齢を重ねるほど増えていき、睡眠の量・質・効率が低下していきます。

そして、思春期が終わり、20代の前半になると深いノンレム睡眠が安定しますが、その時期はあっという間で、20代の終わりごろからはすでに減少が始まります。

年齢を重ねるほど睡眠の量も質も低下します

そして40代になるとノンレム睡眠の量も質も低下し、深い睡眠の脳波も小さくなり、40代の後半になると10代のころと比べて深い眠りが60〜70%も減少します。

しかし、大部分の中年〜高齢者は、睡眠の質が低下することに気がついていないのが現状です。

睡眠不足が健康な細胞を蝕む

その① 睡眠不足は血管の老化を早める

人は血管から老化すると聞いたことはありませんか?

人の体の血管系の全長は9万km(地球を2周と1/4の長さ)にも達するといわれています。

そして血液は脳、心臓、筋肉など、人体の各臓器の発育や活動に必要な栄養分を運ぶことであらゆる身体発育と活動の源となっており、健康な体に欠かせません。

睡眠不足は血管の老化を早める

私はこれまで臨床の中で、外傷や慢性潰瘍などの皮膚のダメージ&再生を専門に診療してきましたが、高齢者ほど血管の老化に伴う皮膚のダメージが深刻な場合が多かったです。

<睡眠不足が血管老化させる主な原因>

・交感神経を刺激する。

・血圧を上昇させる。

・コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンを増加させる。

・細胞を修復する成長ホルモンの分泌を低下させる。

実際、45歳以上で睡眠時間が6時間未満の人は。7〜8時間寝ている人に比べて、心臓発作か脳卒中を生涯で起こすリスクが200%上昇するとの報告があります。

その② 睡眠不足は食欲を増し、代謝を低下させることで肥満の原因となる

在宅医療サービスを提供するにあたり、「肥満」はキーワードのひとつです。「睡眠時間が短くなると体重が増えた」ことを実感する方はいませんか?

実はこれには理由があります。睡眠不足は食欲増加と代謝低下のダブルパンチであなたの体重をどんどん増やし、お腹を大きくしていくのです。

 睡眠不足は肥満の原因にも

その犯人は、「レプチン」と「グレリン」と呼ばれる2つのホルモンです。レプチンは「満腹だ」という信号を出し、グレリンは強い空腹感の引き金になり食欲を増加させます。

そして、睡眠不足はレプチンを減少させ、グレリンを増加せることがわかっています。すなわち、「満腹感をなくし」、かつ「空腹感を増やす」方向へ働くのです。

事実、睡眠時間を5時間に制限した実験では、ホルモンと食欲のバランスが完全にくずれてしまうと報告されています。

さらに、睡眠不足の身体は食べすぎで摂取した余分なカロリーを効率よく代謝することができなくなってしまいます。

逆を言えば、睡眠はダイエットの強い味方になるということです。

一晩ぐっすり眠るだけでも、脳内を回復させ、異常な食欲を正常に戻すトリガーになることがわかっています。

一晩ぐっすり眠るだけでも、脳内を回復させ、異常な食欲を正常に戻すトリガーになることがわかっています

また、同じようにダイエットをしても、睡眠時間が短い群(5時間半)に比べて、睡眠時間が長い群(8時間半)の方が、脂肪が落ちやすいという臨床研究もあります。

さらに、十分な睡眠は神経を休ませる効果があり、腸内細菌を元気にすることで健康な腸につながっているのです。

その③ 睡眠不足は肌荒れの天敵であるジャンクな食べ物が好きになる

睡眠不足の時は甘いもの、炭水化物、しょっぱいスナック菓子の消費が増えます。

睡眠不足の時は甘いもの、炭水化物、しょっぱいスナック菓子の消費が増えます。

これは睡眠不足により脳の前頭前皮質と呼ばれる部位の活動が鈍ることで、脳の活動がより原始的になり、食べ物の選択に影響を与えていると考えられています。

ジャンクフードの動物性脂質などは、肌荒れや大人ニキビを引き起こします。

睡眠不足に陥らせる犯人は誰か

現代人の眠りに影響を与えている要素は大きく4つです。

(1)就寝前のスマホやパソコン

(2)コーヒーの習慣

(3)過度なアルコール

(4)通勤時間が長い(職場の始業時間が早い)

就寝前のスマホは体内時計を狂わせる

スマホをはじめとする人工光には脳内の体内時計を狂わせる働きがあります。

特に寝る前のiPad(青色LEDを使用しているタブレット)を2時間使うと、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が23%も抑えられてしまうというデータもあります。

就寝前のスマホは体内時計を狂わせる

さらに、近年、電子機器で読書をする人が増えていますが、iPadでの読書は紙の読書に比べて、メラトニンの分泌量が20%以上も減ってしまうことがわかっています。

就寝前1時間は電子機器を使うのを避け、遮光カーテンなどを用いて寝ている間は寝室を真っ暗にすることが大切です。

アルコールは睡眠を断片的にしてレム睡眠を抑制する

アルコールは睡眠を断片的にしてレム睡眠を抑制する

アルコールの鎮静作用は覚醒の状態を奪いますが、それは自然な眠りとは異なり、軽い麻酔にかけられている状態に近いです。

そして、アルコールは睡眠を断片的にし、夜中に何度も目を覚ますことになります。

また、アルコールの分解により生じるアセトアルデヒドはレム睡眠を障害し、睡眠のバランスが壊してしまうのです。

まとめ~睡眠はお金のかからない魔法の薬

まとめ~睡眠はお金のかからない魔法の薬

繰り返しになりますが、睡眠時間が短くなりやすい現代人にとって、健康で元気な身体を維持するために睡眠は大切なのです。

投稿者プロフィール

西嶌 暁生
西嶌 暁生
医学博士、形成外科専門医。株式会社ZAI 代表取締役社長

2013年より筑波大学の形成外科で、創傷治癒、外傷、再建、美容外科及び美容皮膚科を専門とする臨床医として従事。その後、「恵比寿形成外科・美容クリニック」の副院長を経て、2023年7月に「恵比寿こもれびクリニック」を開院。肌細胞の再生をキーワードに、美と健康のパーソナルドクターとしてオーダーメイド医療を提供している。

【資格】:医師、医学博士、形成外科専門医、認定産業医、MBA、JDLA認定E資格
【専門】:形成外科、美容外科、きず跡修正、医療レーザー(シミ、シワ、たるみ)、目周りの手術、フェイスリフト、脂肪吸引、メンズ美容、医療AI

《著書》
だから夫は35歳で嫌われる メンズスキンケアのススメ 光文社
「無駄なケアをやめる」から始める美肌スキンケアの新常識大全 宝島社

《メディア》
夕刊フジ「50歳からでも遅くはない 誰でもできる男のアンチエイジング術」毎週月曜日に連載中
オレンジページ、美的、女性セブン、CanCam等
フジテレビ「ポップUP!」出演
bayfm「MOTIVE!」出演

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